『台頭する中国動画配信サイト~正在崛起的中國視頻網站~』
近年、NetflixやAmazonプライム・ビデオ、Huluなどの大手動画配信サイトが、続々とオリジナルコンテンツを制作・配信しています。こうした流れは、スマホが普及し、生活スタイルが多様化する中で、ネットでドラマや映画を好きな時間に、手軽に視聴したいというニーズの高まりを受けての変化であり、5G通信が実現すれば、今後さらにこの流れは加速するでしょう。国の規制が厳しく、業界間や部門間での制度や構造的障壁が大きい日本でさえこうした流れが進んでいるのだから、中国は言うまでもありません。何故なら、上がGOを出せば、省庁の複雑な許認可、調整など吹き飛ばし、トップダウンで一気に物事が進むからです。
中国では、愛奇藝(アイチーイー)、優酷土豆(ヨウクートゥートウ)、樂視視頻(ルゥーシーシィーピン)、といった動画配信サイトが有名ですが、その規模やスケールは日本の比ではありません。2017年6月の時点で、中国のインターネットユーザー数は7億5000万人を突破しており、スマホの急激な普及も相まって、今後更にユーザー数は増加すると思われます。7億5000万という数字をどう見るかは、人によって意見は異なるかと思いますが、中国の総人口を鑑みると、過半数を少し超えたに過ぎません。
ちなみに、愛奇藝、優酷土豆共に、2016年の時点で、有料会員数が2000万人を突破しています。中国大手の動画配信サイトは、こうした巨大市場に向けて、収益システムを、広告モデルから有料会員登録をベースにしたモデルへと移行させています。また、それに伴い各社差異化を図る為、自社オリジナルコンテンツの制作・配信にも力を入れてきています。数十億円の制作費を投じて制作された大作も次々と出現するなど、映画やTVではない第三極として、スマホやEC、高速データ通信普及の波に乗り、急速に成長を続けているのです。映画館を必要としない「映画」です。
日本国内では、制作費がいくら高くても、中国の撮影技術やクオリティーはまだまだではないか?と言ったような声もよく耳にしますが、ドローン(深圳発のベンチャー企業DJIは、商用ドローンの世界シェア70~85%)に代表される最新の機材に加え、ABC(アメリカ生まれの中国人)や海外で撮影技術やノウハウを学んだ帰国子女組、更には超難関と言われる、北京電影學院や中央戲劇學院、中國傳媒大學等で英才教育を受けた俳優やアナウンサー、監督、脚本家、その他、メディアや放送に携わるスタッフ達のレベルは、日本を凌駕していると言っても過言ではないほどです。さらに、各制作会社は、潤沢な予算を背景に、世界中から優秀な監督、キャスト、美術や照明、音響等のスタッフを集め、中国が主導となって新たなアジア合作の作品を多数生み出しています。中国の作品だから、キャストやスタッフは皆、中国人であると思ったら大間違いなのです。
例えば、アートディレクターの種田陽平氏は、かねてから国内はもちろん、海外でも非常に人気が高く、台湾の魏徳聖(ウェイ・ダーション)監督の「セデック・バレ 第一部 太陽旗/第二部 虹の橋」(2011年)では 第6回アジアン・フィルム・アワーズや、第48回台北金馬影展で最優秀美術監督にノミネートされ、許誠毅(ラーメン・ホイ)監督の中国映画「捉妖記」(2015年)では、第52回金馬奨 美術賞にノミネートされるなど、名実共にアジアを代表する美術監督となっているのです。
次回、中国・香港・台湾に代表されるアジア映画をご覧になられる際は、エンドロールを最後までしっかりと見て頂きたいです。如何に多くの海外作品に、日本の優秀なスタッフが参加しているかということが良くわかるでしょう。メインキャストに日本人俳優が参加していないと、アジア合作映画として、日本国内ではなかなか認知されませんが、その裏では、中国資本が主導となって、新たなアジア合作の潮流を巻き起こしているのです。
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