『中国語が話せる強み~在國際合作的現場上,有時語言能力會幫助自己的演戲~』
昨年11月、中国のテレビドラマ「大鼻子情聖」という作品の日本パートの撮影にキャスト兼スタッフとして参加しました。大雪に見舞われましたが、北海道の札幌や小樽で撮影し、無事にクランクアップすることができました。
今回で中国の作品に参加したのは3作目となり、1作目は2016年5月に出演した、何泰然監督の「囧日之東京大冒険」というネット映画で、中国国内のクリック数は2300万を超え、スマッシュヒットとなりました。自分が演じた役柄としては、兄の歌舞伎町の案内人と、弟のヤクザ幹部の兄弟役で、一人二役を演じました。中国人の訪日旅行が過熱する中で、いわゆる“歌舞伎町”など世界最大級の歓楽地としての魅力と、“極道”の中国国内における一種の憧れのようなイメージを基にした作品であったように思います。
2作目は、2017年8月に東京で撮影した張帆監督「謎・途 Trouble Killer」(2018年愛奇藝(アイチーイー)にて公開予定)です。1話45分、全24話、制作費が4000万元(約7億円)と、スケールの大きな中国のネットドラマで、中国、イタリア、日本の3カ国で撮影しました。日本パートでは、ヤクザ同士の抗争を、アクションを交えて撮影し、自分が演じた役柄も、やはりヤクザの構成員でした。横浜の黄金町周辺でロケを敢行し、ヤクザ同士40名ほどの大乱闘シーンを撮影するなど、大掛かりなものでした。主演はアジアで大ヒットした「琅琊榜(ろうやぼう)―麒麟の才子、風雲起こす―」の2作目に主要キャストとして抜擢された、人気俳優の張博(チャン・ボー)であり、噂によると彼一人のギャラだけで1億元(約1億6000万円程)程になったそうです。
話は戻り、今回の作品が私自身3作目の中国作品となったわけですが、日本人キャストは自分1人で、全スタッフを含めても日本人が2人しかおらず、更に、監督とカメラマン、照明部は韓国人で、その他スタッフは全員中国人という、まさに“アジア”合作の現場でもありました。韓国人の張宰赫監督は、東方神起の「Catch Me」や少女時代等のPVを撮られた有名な監督でしたが、とても物腰が低く、“国際合作”慣れしてるなぁという印象を受けました。ただ、こだわりも強く、現場でこのロケーションが良いとみるや、急きょ予定を全て変更し、時間を延長してでも撮影するなど、制作サイドとしては、臨機応変に対応する能力が求められました。
キャスト、スタッフ合わせて80人ほどの現場では、当然、韓国語と中国語が飛び交うわけですが、監督にも中国語の通訳が付くため、基本的に共通言語は中国語となっていました。美しい北海道の景色の中で、一瞬自分が今どの国にいるのかわからなくなるほど、中国語に囲まれた現場でしたが、監督やスタッフの方と、自分の言葉で“話し合う”ことができたのは自分の強みでありました。もちろん、通訳を通してもコミュニケーションはとれますが、それはあくまで最低限の情報でしかありません。なぜなら、言葉は一度通訳のフィルターを通るので、その変換された段階で、本来の言葉のニュアンスが薄れてしまう可能性があるからです。
また、通訳の方が必ずしも、“お芝居”をわかっているとも限らないのです。もちろん、なるほどこうやって訳せば、より分かりやすくなるのかぁ!と舌を巻く程素晴らしく伝え、皆からの信頼を勝ち取っている優秀な通訳の方を数名知っていますが、言葉の微妙なニュアンスのズレが、そのシーンの意味合いを狂わしてしまうということもあり得るのです。外国との合作映画で、日本を代表するような俳優が出演されているにもかかわらず、あれ?と思うようなシーンをご覧になられた方々も多いのではないでしょうか。もちろん、全てが言葉のせいということではありませんが、少なくとも、コミュニケーションが如何に重要かということは解っていただけるのではないでしょうか。なぜこのシーンで泣かなければならないのか?笑わなければならないのか?なぜこのセリフなのか?と誰かに問われた時には、その前後のシーンの意味や、感情の流れを汲んで、時には論理的に相手に説明できなくてはなりません。
役者をしていると、同じ役者の気持ちが良く分かるので、意思疎通が上手く行きやすいです。ですが、それよりも何よりも、言葉が話せると“心”が打ち解ける速度が全く異なってきます。それは人間だから当然のことですし、特に中国人は、自国の言語や文化にプライドを持っているので、外国人が中国語を話すと、本当に喜んでくれます。「何故そんなに上手いんだ?どこで勉強したのか?どれくらい勉強したのか?」と、必ずと言って良いほど聞かれます。何故なら、それは彼らにとっては、自国に対して敬意を払ってくれていることと同等の意味を持つからです。語学はあくまでツールでしかないということは紛れもない事実ですが、そのツールが無ければ、空かない扉があることもまた事実なのです。
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