『アジアの映像エンターティメントが一堂に会する香港フィルマート~香港國際影視展-亞洲最大影視展~』
香港フィルマートという言葉を初めてお聞きになった方も多いのではないでしょうか?香港フィルマート(正式名称:Hong Kong International Film & TV Market )は、香港貿易発展局が主催する、アジア最大の映像コンテンツの見本市のことです。
香港島の灣仔(ワンチャイ)にある香港コンベンション&エキシビションセンター(以下:HKCEC)がメイン会場で、毎年開催されており今年で第22回目を迎えました。ちなみに昨年度は、35ヶ国の国と地域から800社もの団体が出展しており、その出展数は毎年増加し、今後その注目度は益々高まっています。
私は2016年度より参加し、今年で3回目の参加となりましたが、今年は例年にも増して盛り上がりを見せていたように思います。
その盛り上がりのけん引役は間違いなく、中国エンターティメント産業の近年の躍動に他ならないでしょう。とりわけ、近年の愛奇藝(アイチーイー)、 騰訊視頻(テンセントビデオ)、優酷土豆(Youku-Tudou)に代表される、動画配信サイトの躍進には目を見張るものがあります。最近のニュースでアメリカのネット動画配信大手、ネットフリックスの全世界での有料会員数が1億2500万人を突破したと報道されていましたが、中国の動画配信御三家もそのスケール感では負けていません。
中国動画配信最大手の愛奇藝は昨年末の段階で有料会員数が6100万人を突破し、騰訊視頻も3月の段階で6000万人を越えました。業界3位の優酷土豆は約3000万人と、上位2社の半数ほどですが、それでも3000万人です。上位3社の合計有料会員数は1億5000万人を超え、日本では考えられない数字となっています。
しかも強調しておきたいのは“中国国内”において1億5000万人ということです。ネットフリックスは“全世界”で1億2500万人なので、約14億人の巨大マーケットがどれだけの可能性を持っているかはわかって頂けたかと思います。更に言えば、総人口から考えるとまだ10%を少し超えたところにすぎません。各社、最終的には4億5000万人ほどまで動画配信マーケットが広がると想定しており、生き残りをかけた熾烈な生存競争が既に始まっています。
香港フィルマートでは、午前中から夕方に至るまで、各業界の最前線で活躍するゲストを招いてのシンポジウムや座談会が開催されます。これを聞きに行くために香港へ行っていると言っても過言ではないほど貴重な機会であり、シンポジウムでは各国の客観的なデータに基づく分析や現状の報告、また、今後の動向や可能性について、映画やドラマだけでなく、アニメやドキュメンタリー、更にはデジタル技術に至るまで、様々なテーマの議題が用意され、深く学ぶことができます。
現場では同時通訳がなされ、英語・中国語・広東語・韓国語・日本語といったような言葉が飛び交います。世界中のメディアや業界関係者が、タブレットやPCを打ちながら参加している会場の雰囲気は独特です。興味深かったのは、中国系のゲスト登壇者が自己紹介をする際、自社の株式コードを述べた上で、自己紹介を始めることです。株式コードを伝えることで、広く投資者を募ろうという戦略であり、至極自然に自己紹介を始める姿は、少し怖くも感じました。日本のシンポジウムで、自己紹介の際に、東証の株式コードを伝えるなんて考えられませんよね?中国国内だけでなく世界中の投資家が、如何に中国の映像産業に注目しているかということが象徴された1シーンで、とても印象的でした。
上述で、動画配信サイト上位御三家だけで有料会員数が1億5000万人を突破したと、お伝えしましたが、なんとこの三社は未だに赤字だそうです。広告宣伝型から有料会員型へと事業モデルを移行中ではありますが、増大する新作の制作費を補うために、有料会員の会員費と投資家からの投資をつぎ込んでおり、未だに黒字化には至っていないようです。それでも、投資家からの投資が後を絶たないというのですから、すごいですよね・・・
如何に新規会員数を伸ばし、獲得した会員を飽きさせずに繋ぎ止めることができるか?
これは、全世界の動画配信業界共通の課題なのかもしれません。
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