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2014.11.27

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｜その拾参

「罪を憎んで人を憎まず」という素晴らしい言葉がありますが、今回は「病を憎んでウイ
ルスを憎まず」という言葉がテーマです（造語です）。

エイズ、肝炎、インフルエンザ、デング熱…、ウイルスによる病はたくさんあります。
そして最近特に問題となっているエボラ出血熱のエボラウイルス。なぜあのような酷い
惨状を引き起こすウイルスが存在するのか？あの凄惨な病状にはどんな意味があるのか？
ウイルスというものが一体どんなものなのか、実はあまり知られていないのではないでしょ
うか。
恐ろしい伝染病を引き起こすウイルスには、知られざる側面があるのです。

まず、ウイルスは普通で考える生物ではありません！
同じく病を引き起こす代表選手の細菌は、小さいながらも立派な生物ですが、ウイルスは
全く構造が異なり、生物と非生物のちょうど真ん中あたりに存在している変わり者なの
です。
どういうことかと言うと、ウイルスは遺伝子がタンパク質や脂質の殻に包まれただけのごく
単純な構造をしています。例えるなら、指輪がプレゼント箱に入っている、だけのそんな
感じです。ウイルス粒子自体は代謝したり活動したりしているわけではなく、単なるモノで
あり、すなわち生きてはいないのです！

生物は「自力で子孫（複製）をつくることができる」というのが前提ですが、ウイルスは
他の生物の細胞に感染し、その細胞の働きを借りることでしか子孫を残せません。
つまり発病のメカニズムを分かりやすく言うと、「人の家（細胞）に勝手にあがりこんで、
冷蔵庫の中身（栄養）どころか、電気ガス水道（エネルギー）や家電家具など（DNAの
複製機構やタンパク質合成の機構）の全てを使って勝手に子供（複製）を作り、子孫を
十分に増やした後、家（細胞）ごと破壊して出て行く…」という感じです。なんたる傍若
無人ぶり。ウイルスがガンガン複製している間、細胞は本来の仕事ができず、また最後には
破壊されてしまうので、それがすなわち病状となり肉体が弱っていくわけです。
こうして他の生物の細胞に感染している時だけ、さも生きているかのように振る舞っているのです。

おいおいおいっ！なんでそんな迷惑極まりないものが存在しているんだ？と思いますよね。
しかし、もう少し詳しく知ってみると、全く別の顔が見えてきます。微小な細菌類も含め、
地球上の全ての生物には多種多様なウイルスが感染しています。人間の身体の中には、なんと
数万種類のウイルスがおり、未知のものはさらに膨大な数いるのではないかとも言われている
のです。考えただけでも気分が悪くなり、すぐにでも病気になって死んじゃうじゃん！と
思ってしまいそうですが、実はウイルスの中には全く病原性を示さない、事実上ほぼ無害の
種類もたくさんいるのです。
人間が罪を犯すために生まれてきたわけではないように、ウイルスも病を引き起こすために
生まれてきたわけではないということです。

じゃあ、ウイルスってもともとなんなの?

という質問に対する答えは、実はちゃんとはわかっていないのが現状ですが、有力な説は
2つあるようです。

一つは細胞に対する寄生生物であったという説。最初はれっきとした微生物だったものが、
寄生して他人の家のものを拝借しているうちに、「あ、借りればいいから自分の家具いらない
や」となって、自分の遺伝子と移動するのに必要な殻だけ残して寄生生活を基本とするように
なったというもの。例えば細胞小器官である、植物の葉緑体や人間を含め全ての真核生物の
細胞に存在しているミトコンドリアなども、もともとは寄生生物だったと言われています。
もう一つは、もともとその生物の遺伝子であったDNA 配列が、独自に増殖力を得て飛び出し、
他の細胞への感染力までをも獲得したものであるとい説。こちらはより衝撃的で、つまり今
現在迷惑をかけられているウイルスは、もともと自分の身体から昔出てったもので、いわば
家出息子が回り回って帰ってきて家で暴れている、という感じであるというものです。
さらに他にも、ウイルスの祖先は、原始の世界では生物の前段階としての存在であったのでは
ないか、という意見もあったりします。

いずれにせよこれらのことから言えるのは、ウイルスも他の生物と一緒で、自己とその複製が
生き残るようにと独特の進化をしてきた結果の存在であるということ。
そういう意味では、傍若無人な押し入り強盗ではなく、私たちと同じ仲間とも言えます。

そんなウイルスたちの一般的にはあまり知られていない本来の振る舞いとは？
意外にもなんかしおらしい感じ？？は次回で！